column大工さんの豆知識

高機能断熱材のセルロースファイバーとは?基本的な性能やメリット・デメリットを紹介

2024.10.17

セルロースファイバーは高品質な断熱素材として、日本でも知られるようになりつつあります。

断熱性の高さだけでなく、防音や防カビ、防虫にも効果を発揮する素材です。

セルロースファイバーは他の断熱材に比べて多くのメリットを持っていますが、一方で気を付けるべきデメリットがあるのも事実です。

本記事では、セルロースファイバーを断熱材として検討する際に気を付けるべきポイントを紹介しています。

セルロースファイバーを断熱材として検討している方は、ぜひ記事内容をご確認ください。

セルロースファイバーとは?

セルロースファイバー断熱材は、回収済みの古い新聞紙などの古紙に薬品処理を加えて、耐火性や撥水性、防カビ性を与えた多機能断熱材です。

地球環境に配慮されたエコな素材として注目されています。当初は海外からの輸入のみでしたが、今では国内の製紙メーカーも製造するようになりました。

セルロースファイバーは天然の木質繊維が絡み合って空気の層を形成し、熱や音を伝えにくくする効果の他に、素材そのものの吸湿性による調湿効果もあります。

フロンガスやホルムアルデヒドを発散する添加剤を使っていないため、地球環境や室内環境にも優しい特徴も見逃せないポイントです。

元々アメリカで生まれた素材ということもあって、セルロースファイバーの普及率は海外でも普及率が高いです。

日本ではコスト面の問題もあり、まだ本格的な普及に至っていません。

セルロースファイバーの断熱性能

セルロースファイバーの断熱性の高さを示す熱伝導率は「0.040 w/mk」です。この数値は、他の高性能断熱材と比べても見劣りしません。

断熱性が高いと言われている各素材とセルロースファイバーの違いを一覧表にまとめました。

高性能グラスウール16kg 0.038w/mk
ロックウール 0.038w/mk
ポリスチレンフォーム 0.040w/mk
セルロースファイバー 0.040w/mk

素材を充填しやすい特徴を考慮すると、セルロースファイバーのメリットはより大きくなるでしょう。

セルロースファイバーのデメリット

エコな素材として注目を集めているセルロースファイバーですが、導入した人の中には後悔する声も挙がっています。

気になるセルロースファイバーのデメリットを4点紹介します。

・他の素材に比べて高い

・セルロースファイバーが壁内で沈む

・施工日数がかかる

・セルロースファイバーを扱える業者が限定的

他の素材に比べて高い

セルロースファイバーは密度を高めるために多くの量が必要です。必要量の多さによって、どうしてもコストが割高になってしまいます。

一般的に使用される省エネ対応グラスウールと比べると、セルロースファイバーの必要量は

3倍と言われています。

その他、セルロースファイバーはグラスウールのようにマット状に成形されていないため、建築現場でシートを張ってシート内に1スパンごとにホースで吹き込み作業を行う手間が発生するのもコスト高の要因の一つです。

素材の量だけでなく手間もかかるため、他の素材に比べるとどうしても割高になってしまいます。

セルロースファイバーが壁内で沈む

セルロースファイバーは素材そのものの自重で沈下が起きる可能性があります。

セルロースファイバーは柔らかく弾力性があるため、自重があればあるほど建物が風圧を受けた時の揺れや常日頃の振動によって少しづつ沈下していきます。

具体的な沈下対策は、精度の高いセルロースファイバーの吹き込み施工で対応可能です。自重の沈下に耐えられる目安の55kg/㎡以上の密度を充填して沈下しないように対策します。

精度の低い工事では沈下が起きてしまうため、工事を依頼するときは信頼できる業者を選びましょう。

施工日数がかかる

セルロースファイバーの施工にはシート貼りをした後に素材を吹き込む手順を踏むため、他の断熱材に比べて施工日数が必要です。

セルロースファイバーを施工した後は、壁の中が全て素材で充填されてしまうため、配管や配線のやり直し工事ができなくなる点にも注意が必要です。

その他の工事と並行して作業ができないため、他の施工業者や大工さんには現場を空けてもらうことになります。

セルロースファイバーを使う場合、ある程度日程に余裕を持たせておいた方が良いでしょう。

施工中にセルロースファイバーが舞い上がる

セルロースファイバーは専用の機械によって大量の空気とともに施工箇所へ送り込まれます。そのため、施工中は空気中にセルロースファイバーが舞い上がってしまいます。

人体への害は報告されていませんが、健康上良いとは言い難いです。

何の装備もつけずに施工中に現場へ立ち入るのは難しいでしょう。

他の施工箇所へ飛散しないように、しっかり養生しておく必要があります。

業者によって施工精度のばらつきがある

セルロースファイバーの吹き込み工法は、いかに素材を沈下させずに施工するかの工夫がとても大切です。

また、断熱施工においてはどこまでが断熱層となるのかを見極めるための十分な知識が欠かせません。

施工業者の中にはセルロースファイバーや断熱材の施工知識を持ち合わせていない業者が存在するのも事実です。

セルロースファイバーの施工後に天井から素材が落ちてきたという事例は、セルロースファイバーよりも施工業者に問題があります。

セルロースファイバーなど断熱素材の施工を依頼する場合、施工業者の選定はしっかり行う必要があります。

和建匠はセルロースファイバーの認定研修を受けた施工業者が施工をするため、安心してお任せいただけます。

セルロースファイバーを採用して後悔するケース

セルロースファイバーの施工後に後悔してしまうケースを3つ紹介します。

デメリットを知らずにセルロースファイバーの施工を決めてしまうと後悔してしまうかもしれません。

・施工範囲の隙間を完全に防いでいない

・湿式吹付施工を使った施工でのアクシデント

・セルロースファイバー沈下による断熱不良

施工範囲の隙間を完全に防いでいない

施工を後悔した人の中には、セルロースファイバーが少しづつ落ちてくる事態に見舞われた人も多いのではないでしょうか。

セルロースファイバーの拭き積もらせ工事では、間柱の気流止めをしないと隙間から素材が落ちてしまいます。

事前の打ち合わせによって断熱材の収まり具合や、塞ぐべきポイントをすべて確認しなければいけません。

セルロースファイバーは扱いの難しい断熱材です。業者選びの段階でしっかりと見極めなければ後々後悔する可能性が高まります。

湿式吹付施工を使った施工でのアクシデント

接着剤を用いた湿式吹付施工はセルロースファイバーの施工方法の一つです。

湿式吹付施工の後に振動や施工面に物が当たることによって、セルロースファイバーが屋根や壁からこぼれ落ちてしまうケースがあります。

接着剤が乾く前に触ってしまうことで起きるアクシデントです。

セルロースファイバー沈下による断熱不良

セルロースファイバーは他の断熱材と比べて重さがあります。施工後の沈下を防ぐためには適切な対策が必要です。

壁内部のセルロースファイバーが沈下してしまうと、部分的に断熱材が入っていない箇所ができてしまいます。

断熱材が入っていない壁は外気の影響をまともに受けてしまい、快適な住環境とは程遠い不快さを招いてしまうでしょう。

不十分な対策によって断熱欠損が起きてしまうと、十分な断熱効果が得られず欠陥住宅となってしまいます。

セルロースファイバーのメリット

セルロースファイバーが持つ素材としてのメリットを4つ紹介します。

・隙間なく充填しやすい

・環境に優しく体に無害

・防虫・防カビ性能がある

・調湿・防音・防火性の高さ

隙間なく充填しやすい

セルロースファイバーは吹き込み不足によって断熱欠損が起きてしまう素材ですが、反面、十分な吹き込みによって隙間なく充填できるメリットもあります。

たの届かないような小さな隙間までしっかりと充填できるため、高い断熱効果を得やすいです。

素材が細かく砕かれているため、施工しにくい配管周りまでしっかり充填することができます。

環境に優しく体に無害

セルロースファイバーは新聞紙やダンボールなどの古紙をリサイクルして作る断熱材です。

製造時のエネルギー消費は少なく、不要になったセルロースファイバーは集めて再利用することもできます。

地球と人体に優しい素材を利用するメリットは、心身ともに良い影響をもたらすでしょう。

防虫・防カビ性能がある

セルロースファイバーに含まれるホウ酸にはゴキブリやシロアリなど、住宅特有の虫を寄せ付けない効果があります。ポリスチレンフォームなどのシロアリに弱い断熱材に比べると、大きなメリットを持っています。

防カビ性能も備えており、セルロースファイバーはまさに家を守る断熱材として活躍してくれるでしょう。

調湿・防音・防火性の高さ

セルロースファイバーは幾層もの空気層で構成されているため、その高い調湿性能や防音性能は大きな特徴の一つです。

周りの環境に合わせて調湿してくれるため、多湿を予防でき、壁の内部の結露まで防ぐことができます。

一定の防音性もあるため、過剰に騒音を気にする必要もありません。

まとめ

セルロースファイバーは新聞紙や古紙などを素材とした断熱材です。断熱効果の他に、防カビや防虫、防音性能も兼ね備えています。

旧来の日本住宅に使われていた白壁のような吸湿性能を持っていることも特徴の一つです。

高い性能をもつ反面、セルロースファイバーは取り扱いの難しい素材でもあります。

十分な吹き込み施工がなされていないと、断熱性能に乏しい欠陥住宅が出来上がってしまいます。

セルロースファイバーを断熱材として検討するときは、デメリットを十分にカバーできるほどの施工技術をもつ業者へ依頼しましょう。

和建匠では、効率の良い全館空調「グリーンフローシステム」を支える断熱素材としてセルロースファイバーを採用しています。また、和建匠はセルロースファイバーの認定研修を受けた施工業者が施工をするため、デメリットをしっかりとカバーできます。 体に優しい空調を検討している方は、ぜひご相談ください。いただいたご要望にベストマッチする提案をさせていただきます。