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住宅換気システムとは?3つの種類とそれぞれの特徴や選び方について紹介

2025.01.23

「住宅換気システムの必要性は分かっているものの、何を選べばいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。

専門家でもなければ換気システムの違い、それぞれの特徴やデメリットはわからないのも致し方ありません。

本記事では家の建築を検討している方へ向けて、義務付けられた換気システムの設置やそれぞれの換気システムの特徴を説明しています。

家の建築を検討している方はぜひ記事内容をご確認ください。

住宅換気システムとは

住宅内部の換気を促進する24時間換気システムは、家の中の空気を自動的に循環させて入れ替えるための設備です。

2003年の建築基準法の改正によって義務化され、法律改正後に建てられた家には必ず24時間換気システムが導入されています。

新しい建築基準法に24時間換気システムの義務が盛り込まれた背景には、シックハウス症候群の予防があります。

シックハウス症候群とは、木の建材や壁紙、断熱材など建築資材に含まれる化学物質を起因として、頭痛やめまい、皮膚や目の刺激感などの症状を起こす健康被害です。

省エネ設計など気密性が高い住宅が増えたことによって、シックハウス症候群が顕在化し始めました。

シックハウス症候群の社会問題化に伴って、24時間換気システムが義務化された、というわけです。

24時間換気システムは常時稼働が基本

鉄筋コンクリート造りのマンションなどでは、生活音や寒さ暑さを考慮した設計によって

気密性を高めた造りになっています。

気密性の高い家は空気の滞留によって結露ができやすくなり、壁や床の痛みやカビやダニの発生、場合によってはアレルギー症状へ繋がることも考えられます。

シックハウスの原因とも言える結露を防ぐためにも、基本的に換気システムは24時間稼働させておかなければいけません。

24時間換気システムを止めた方が良い場合

24時間換気システムは外気を部屋に取り込むため、ひどい大気汚染や放射能によって空気が汚染されている場合は停止しなければいけません。

緊急時のために24時間換気システムの停止方法を確認しておきましょう。

住宅換気システムの種類

基本的に住宅換気システムは、外部と接する給気口から外の空気を取り込みつつ、室内の空気を別の排気口から排出して空気を循環させています。

すべての仕組みが同じというわけではありません。換気方法によって次の3つの種類に分類されています。

  • 第一種換気
  • 第二種換気
  • 第三種換気

それぞれの換気方法について詳細を説明します。

第一種換気

給気と排気にそれぞれ機器を設置して、どちらも機械的に稼働させます。

給気と排気の装置が常に動いているため、確実に空気循環ができる点がメリットです。

安定的に空気の入れ替えができるため、換気状態を維持しやすくなります。

換気すると外気の流入によって室温が変わりやすくなってしまいますが、第一種換気の場合は熱交換器という専用の機器を使うことで、部屋の温度を一定に保ちやすくできる強みもあります。

機械的に換気ができる一方で、他の換気システムよりも電気代がかかる点はデメリットです。

第二種換気

給気だけを機械的に行うことによって自然排気を促します。室内の気圧を高くして外部に空気を押し出す仕組みです。

室内の気圧が高くなると窓や扉を開けた時に外気を取り込みにくくなるため、工場のクリーンルームや無菌室、手術室などで利用されます。

室内が常にきれいな空気で満たされるのは第二種換気の特徴です。

室内と外気の気圧差によって生じる壁内結露が、気になるデメリットとして挙げられます。

第三種換気

第二種換気とは反対に、排気のみを機械的に行う方法です。自然給気によって室内の空気を循環させます。

室内の空気がたまりにくいため、結露が発生しにくく、気密性の高い建物にはぴったりの排気方法です。

一方、全ての部屋に給気口を設置する必要があるため、室温が外気に左右されやすいデメリットもあります。

風通しの良い日本家屋や気密性に欠ける木造住宅では冷暖房費用がかさむ可能性があります。

住宅換気システムを選ぶ時のポイント

第一種換気や第二種換気、第三種換気を選ぶ際のポイントや、設備を検討する時のチェックポイントを紹介します。

  • 第一種換気がおすすめできるケース
  • 第二種換気がおすすめできるケース
  • 第三種換気がおすすめできるケース
  • 設備を選ぶときのポイント

第一種換気がおすすめできるケース

寒冷地域では第一種換気が有効に機能します。また、アレルギーの原因となる花粉やホコリが気になる方にもおすすめです。

第一種換気熱効果換気装置の働きによって、取り込んだ外気を室温に近い状態にして給気することができます。

住宅の換気による熱の損失は全体の30%と言われていますが、第一種換気のシステムがうまく機能すると換気による熱の損失を食い止めることができ、断熱性の高さをそのまま発揮できる、というわけです。

厳しい寒冷地の冷え込みでも十分に暖かさを維持することができます。

第二種換気がおすすめできるケース

第二種換気は給気を一つの箇所で行うため、高性能フィルターを採用するケースが多いです。

花粉やPM2.5などのアレルギー物質、排気ガスなどをきれいにしたクリーンな空気を取り込むことができます。

室内の気圧が外気よりも高くなるため、常にきれいな空気で満たされる点は大きなメリットです。

花粉症や化学物質のアレルギーに悩まされている方は、第二種換気がおすすめです。

第三種換気がおすすめできるケース

第三種換気のメリットは第一種換気に比べて、導入コストとランニングコストを安く抑えられる点にあります。

フィルターの掃除や交換などのメンテナンス費用や換気ファンにかかる月々の電気代も割安です。

コスト面を重視した換気システムを構築したい方には第三種換気がおすすめです。

工務店によって取扱の有無がことなりますので、予算の範囲内で設置可能な換気システムを選ぶようにしましょう。

設備を選ぶときのポイント

換気システムの設備を選ぶときのチェックポイントを紹介します。

ダクト式とダクトレス

ダクト式とダクトレス式を選択できます。

ダクト式は配管でそれぞれの部屋をつないで一つの機械で管理する方式です。

ダクトレスは、それぞれの部屋で換気が完結するもの、または部屋のどこかに設置された排気システムで排気を行い、部屋のどこかに自然給気口を設けたものです。

ダクト式はそれぞれの部屋にダクトを通す必要があるため、コストがかかります。天井裏のダクト設置を考慮する必要があるため、ある程度実績と経験のある工務店への依頼が必要です。

ダクトレス方式は、モーター付きの換気システムを各所に設置する必要があります。モーターは定期的な交換が必要になるため、ランニングコストは多少かさむ可能性があります。

全熱交換換気と顕熱交換換気

第一種交換換気で設置する熱交換換気装置は、全熱交換換気と顕熱交換換気から選択できます。

全熱式は温度や湿度を調整しつつ換気ができるシステムです。顕熱式は温度の調整のみを行います。

価格は全熱交換換気の方が高価です。ダクトレスの第一種換気の場合、各部屋ごとの設置もさることながら、ランニングコストもそれなりの費用がかかると考えておいた方が良いです。

メンテナンスのしやすさ

換気システムの本来の性能を維持しつつ使い続けるには、定期的なメンテナンス、掃除が重要です。

メンテナンスを怠るとフィルターにホコリがつまってしまい、目詰まりを起こしてしまいます。

ホコリが詰まったフィルターをそのまま使い続けていると、カビの原因にもなり、換気性能が落ちるどころか身体的な影響も懸念されます。

メンテナンスの頻度や方法は、それぞれのメーカーによって変わります。継続的なメンテナンスのことを考えると、少しでも掃除がしやすい換気システムを選んだ方が良いでしょう。

生活環境やライフスタイルを基準に考える

現在の生活環境や、ライフスタイルに合わせて換気システムを選ぶと後悔がありません。

例えば寒冷地に住んでいる方は、ダイレクトに寒さを感じにくい第一種換気がおすすめです。

日々の生活が忙しく、メンテナンスに十分な時間を取りたくない方は第三種換気を選んだ方が後悔が少ないでしょう。

アレルギー体質で毎年の花粉に悩まされている方は、第二種換気で満たされるクリーンな空気に大きなメリットを感じるでしょう。

地域やライフスタイルによって最適な換気システムは変わりますので、施工業者と相談のうえ、検討しましょう。

音の大きさ

24時間換気システムは寝ているときも常に稼働し続けるため、音の大きさはとても重要です。

第一種換気システムは他の換気システムよりも機械の設置台数が多くなるため、必然的に音が大きくなります。

重視するポイントは換気性能と快適な住空間のバランスです。家を建てるときは事前にモデルハウスなどで確認しておいた方が良いでしょう。

換気システムについてよくある質問

換気システムについてよくある質問を2つピックアップしました。

換気システムごとの健康への影響に違いはありますか?

家の大きさに合わせた必要換気量(0.5回/h)をしっかり確保できていれば、どちらの換気システムでも快適な生活に支障はありません。

必要換気量を十分に確保するには換気設計と気密性能が大切です。設置した24時間換気システムが十分に稼働しているか、家が完成した時点で換気量測定を行ってチェックしましょう。

第三種換気は虫が入りやすいのでしょうか?

給気口にはフィルターがついているため、虫が侵入してくることはありません。

フィルターからの侵入はありませんが、劣化したフィルターのスキマから虫が侵入してくることは考えられます。

その他、24時間換気を長い時間止めてしまうと排気口から虫が侵入してくる可能性も考えられます。

フィルターを清潔に保ちつつ、常に換気システムを動かしていれば虫の侵入の心配をする必要はありません。

まとめ

換気システムの義務化によって、気密性の高さと適度な換気のバランスが保たれるようになりました。

家を建てるときは3つの換気システムから、生活環境やライフスタイルに合うものを選択します。

それぞれの特徴と気を付けるポイントがあるため、事前にしっかり把握しておきたいところです。 和建匠では、モデルルーム建築の際に家の構造を後悔する構造見学会を実施しています。換気システムの確認もできますので、家の建築を検討している方はぜひ足をお運びください。